アメリカの調査機関が全米で調査をしたところ、TwitterのユーザーはTwitterを利用していない人々と比べて若くて、裕福で、高学歴という結果が出ました。
こんな情報を見たらツイッターをしているあなたはどう感じますか?嬉しい気持ちになりますか?ツイッターをしてないあなたは信じられますか?
これは実際にあった調査とそこから導き出された結論で、その報告書を元にした記事もあります。
この記事は「ツイッターユーザーは社会一般とは異なる属性がるので、社会の声を反映しているわけではない」という趣旨の記事です。
私は「ツイッターユーザーが若くて、裕福で、高学歴」という結果をもたらした要因が気になったので、探ってみました。
導き出された調査結果
上記記事から調査結果について書かれている部分を引用します。
ピュー研究所で同僚のアダム・ヒューズとともに報告書を執筆したステファン・ウォイチクはこう語る。「わたしたちが比較したかったのは、Twitterのユーザーはその他の一般の人々とは異なるのかということです」
その答えは、ほとんどのケースで「イエス」だった。この結果は一般化できると研究者は考えている。米国のTwitterユーザーは、非ユーザーと比べると概して若く、裕福で、学歴が高いという結果だった。
ポイントを抜き出すと3点です。
米国のTwitterユーザーは、非ユーザーと比べて
- 若い
- 裕福
- 学歴が高い
ことが分かりました。
調査結果をまとめた画像も掲載しておきます。
なお、上記3点に加えて「問題意識が高い」「進歩的な考えを受け入れやすい」などの調査結果もあるのですが、これらは今回シカトです。
調査対象について
調査対象についての確認内容もつらつらと書いていたのですが、全体の分量削減のためポイントのみ書くことにしました。WIREDの記事には調査対象は以下のように書かれています。
ピュー研究所では、全米における成人のTwitterユーザーの代表サンプルとして2,791人を抽出し、その年収、学歴、さらには人種や移民といった問題に対する意見など、あらゆる点を調査した。その後、回答を米国内のより広い母集団について実施した別の研究結果と比較した。
ポイントとなるのは米国内のより広い母集団に対する調査では、インターネット環境を持ってない人も対象に入っているという点です。
調査対象については、こちらに詳しく書かれています。
ツイッターユーザーになるための条件
この調査ではツイッターユーザーと非ツイッターユーザーを比較しています。
ところでツイッタラー(注:ツイッターをやる人)って、万人が気軽になれるものでしょうか?私は「否!」と叫びたい!条件を考えてみましょう。
まず思いつくのは「インターネットを使っている」。これは必須条件です。インターネットを使わずにツイッターをやってるとしたらそれはツイッターではなく伝書鳩だと思われます。
次に挙げられるのは「スマートフォンを使っている」。厳密に必須条件かと言われればNOですが、ツイッタラーたるものスマホを使っているのは当たり前と考えていいでしょう。
最後は言語能力についてです。ツイッターをやっている方ならお判りでしょうが、ツイッターを嗜むためには高度な言語能力が要求されます。
タイムラインには愛するフォロワー達がこれでもかと垂れ流す情報が溢れかえってますが、それを高速で読んでいく速読力が必要です。
書く方では世の中への不平不満を140文字という枠に詰め込めるだけつめこんでいく、文章作成能力が必要です。
つまり高度な読み書きの能力を持っている必要があります。ここでは3歩引いて「読み書きができる」としておきましょう。
以上の3点はツイッターユーザーとしてやっていけてる時点ですでに突破している関門です。
仮説と検証
さて、メインの仮説と検証パートに入ります。
「こういうことが要因でその結果に結びついているのでは?」という仮説を立てて、それを裏付けるデータがないかを探しています。
先ほどツイッターユーザーが突破している関門を含めて6つ仮説を立てました。
インターネット環境を持っているから
1つ目は「インターネット環境を持っている人は、若くて、裕福で、高学歴である」という仮説です。
インターネットユーザーと非インターネットユーザーの比較データを見てみましょう。こちらの記事の2019年のデータを元に表にしました。
カテゴリ | 範囲 | ネットユーザー |
---|---|---|
年齢 | 18-29 | 100% |
30-49 | 97% | |
50-64 | 88% | |
65+ | 73% | |
収入 | $30,000未満 | 82% |
$30,000-$49,999 | 93% | |
$50,000-$74,999 | 97% | |
$75,000以上 | 98% | |
学歴 | 高卒未満 | 71% |
高卒 | 84% | |
大学中退 | 95% | |
大卒以上 | 98% |
これは仮説が立証されたと言えるでしょう。
まあそうだろうな
スマートフォンユーザーだから
2つ目は 「スマートフォンユーザーは、若くて、裕福で、高学歴である」 という仮説です。
スマートフォンユーザーとガラケーユーザーの比較データを見てみましょう。こちらの記事を元に表にしました。
なお、携帯を持っていない人も入っているため両者の合計は100%になりません。
カテゴリ | 範囲 | スマホユーザー | ガラケーユーザー |
---|---|---|---|
年齢 | 18-29 | 96% | 4% |
30-49 | 92% | 6% | |
50-64 | 79% | 17% | |
65+ | 53% | 39% | |
収入 | $30,000未満 | 71% | 23% |
$30,000-$49,999 | 78% | 18% | |
$50,000-$74,999 | 90% | 8% | |
$75,000以上 | 95% | 5% | |
学歴 | 高卒未満 | 66% | 25% |
高卒 | 72% | 24% | |
大学中退 | 85% | 11% | |
大卒以上 | 91% | 7% |
これも仮説が立証されたと言えるでしょう。
まあそうだろうな
読み書きができるから
3つ目は 「読み書きができる人は、裕福で、高学歴である」 という仮説です。
国際成人力調査(PIAAC)というものがありましてその中で読解力のテストが行われています。下の表は16~65歳のアメリカの成人の読解力レベルごとの分布です。
詳しい説明は省きますが、レベル1以下が英語の読解力が低い層と分類しています。実に全体の21%を占めています。レベル1の読解力がどの程度かの説明は以下のようになってます。ツイッタラーはレベル1は間違いなく超えているでしょう(他の言語で超えていて英語では超えていないという場合もあるかもしれませんが)。
比較的短い文章をコンピュータ上または紙面で読み、質問または指示された情報と同一または同義の情報を見つける。基礎的な語彙を理解し、文章の意味を判断し、まとまった文章を読む知識とスキルが評価される。
Wikipedia (翻訳確認済み)
次に同じくPIAACより読解力と職業の関連性のデータです。先ほどのレベル1以下はスコアで言うと225点以下です。
なお、各項目は以下のよな職業が当てはめられています。
- Skilled occupations:管理職、専門職、技術者・準専門職
- Semi-skilled white-collar occupations:事務職、サービス業等の従事者
- Semi-skilled blue-collar occupations: 農林水産業・手工業・ 建築業等従事者
- Elementary occupations:単純作業の従事者
BBCニュースでは読み書きができないアメリカ人は成人の8.1%と伝えています。会話はできるが、読み書きができない割合は日本とはだいぶ状況が異なっています。
上記の調査結果を鑑みて、読み書きができる人の方が、収入が多くて、学歴が高いのは明白でしょう。
鑑みなくても想像できてた。ただ、この割合は想定外。
ツイッターの歴史が短いから
この仮説は3つの要素のうちの1つだけに関係します。「ツイッターの歴史が短いからユーザーが若い」という仮説です。というか定説です。
そもそもツイッターっていつから始まったサービスなんでしょうか?
just setting up my twttr
— jack 🌍🌏🌎 (@jack) March 21, 2006
これがツイッター共同創設者のジャック・ドーシー氏によるツイッターの1番最初のツイートです。ちなみにツイートIDは20でそれ以下の数字はないそうです。
2006年…今からざっと14年程前ですね。歴史はまだまだ浅いです。
例えば、「TikTokのユーザーは若い」と言われたらどうですか?「当たり前だよ!」と爆笑問題の田中氏のようにツッコミを入れますか?私はツイッターにも同じツッコミを入れたいです。
ツイッター開始年は分かりましたが、仮説が立証されたとは言えません。
歯の間に笹が挟まってるみたいで気持ち悪い
可処分時間が長いから
可処分時間とは「自分の意志で自由に使える時間」を指す言葉です。仕事や家事、子供の世話などといった時間が長い人はこの可処分時間が短くなります。エンタメのサービスはこの可処分時間の取り合いをしています。
私は「ツイッターを嗜んでいる人々は、可処分時間に余裕がある」「可処分時間に余裕がある 人は、収入が高い」という2段階の仮説を立てました。
自分の自由な時間が短い人が140文字に思いを込めて呟くことに優先的に時間を使うということは考えにくいため、1段階目の仮説はおそらく合っているでしょう。(そもそもここが違うかもしれません)
2段階目の仮説の検証用のデータを調べましたが、残念ながら可処分時間と年齢や収入の関係を調査した結果は見つかりませんでした。ちなみに可処分時間を英語では「disposable time」と言うようです。
本記事の購読に可処分時間を割いてくださり、ありがとうございます!
もうちっとだけ続くんじゃ
金持ちはツイッターが好きだから
最後の仮説は「金持ちはツイッターアカウント持ちがち」という仮説です。
金持ちと言えばフォーブスの富豪ランキングでしょう。2019年版のTOP10の登場人物のツイッターアカウントの有無を調べてみました。認証バッジ付きのみを本人としています。
名前 | アカウント名 | 最新ツイート |
---|---|---|
Jeff Bezos | @JeffBezos | 今年 |
Bill Gates | @BillGates | 今年 |
Warren Buffett | @WarrenBuffett | 2016年 |
Bernard Arnault | アカウントなし? | – |
Carlos Slim Helu | アカウントなし? | – |
Amancio Ortega | アカウントなし? | – |
Larry Ellison | @larryellison | 2012年 |
Mark Zuckerberg | アカウントなし? | – |
Michael Bloomberg | @MikeBloomberg | 今年 |
Larry Page | アカウントなし? | – |
結果は五分五分!残念ながら仮説は成り立ちませんでした。
金持ちはプライベートジェット乗りがち(調査はしてない)
ちょっと脱線
ここまで「TwitterのユーザーはTwitterを利用していない人々と比べて若くて、裕福で、高学歴」に関連する仮説と検証を進めてきましたが、ちょっと脱線した内容も書かせてください。
学歴と収入
「若くて、裕福で、高学歴!!どやっ!!」となっていますが、「裕福」と「高学歴」って関連があるのではと思った方いませんか?
ということで学歴と収入、ついでに失業率の調査データです。
もちろん中には特例もありますが、集団としてみた場合は「学歴が高い」と「収入が多い」は同義と言えると思います。
学歴が高い人は学歴が低い人に比べて収入が高い
両方書いた方がすごそうに見えるけどそれは手法であろう
iPhoneユーザーとAndroidユーザー
先ほどはスマホユーザの調査データを見ましたが、ここではスマホユーザーの中をさらに分解してみます。iPhoneユーザーとAndroidユーザーの比較がおもしろいです。こちらの記事を元に表にしました。
項目 | iPhone | Android |
---|---|---|
平均年収 | $53,251 | $37,040 |
メッセージ送信数(1日) | 58 | 26 |
スマホを見る時間(1日) | 4時間54分 | 3時間42分 |
自撮り回数(1日) | 12 | 7 |
テクノロジーに使うお金(1ヶ月) | $100.88 | $50.83 |
旅行に行く回数(1年) | 4 | 3 |
iPheneユーザーのスマホを見る時間と自撮り回数やっばっ!(いい意味で)
iPhoneユーザーはAndroidユーザーに比べて収入が高く、可処分時間が長い
ワタシ、二ホンのアンドロイドユーザー。
自撮り回数は、月一回イカナイヨ。
ツイッターをやってると裕福になれるのか
みなさんお分かりでしょうが、一応触れずにはいられません。
「ツイッターユーザーの方が裕福で学歴が高い」という調査結果を見て、ツイッターをやるといい効果があると感じる方もいるかもしれません。しかし、そのユーザーがツイッターを始めたのはどれだけ早くても14年前です。
「ツイッターをしていたから裕福で学歴が高くなった」のではなく、「裕福で学歴が高い人がツイッターをしている」という解釈の方が自然だと思います。「株を持っている人が裕福」なのではなく、「裕福な人が株を持っている」と同じではないでしょうか?
ツイッターユーザーかどうかとは関係ないですが、デジタルネイティブの若者がどんどん社会に出てきてどのように活躍していくのかは非常に興味深いです。
株を持っているが損ばかりする人も結構います。
まとめ
今回、立証された仮説を見ていきましょう。
ん?スマホって読み書きできる人しか使えなくない?
ん?スマホがあればインターネットユーザーだよね?
ということでスマホユーザーであればすべての条件をクリアしてると言えるのではないでしょうか?
今回の調査結果はツイッターに限ったことではないのではないかというのが私の見解です。スマホで使う前提のアプリであれば「○○ユーザーは、非ユーザーと比べると概して若く、裕福で、学歴が高い」という結果が出るのではないかと予想します。
あとがき
今回はアメリカでの調査結果を見てきましたが、いかがだったでしょうか?いろいろなところで日本では違うなぁと感じたのではないでしょうか?ツイッターユーザーについてここまで詳細に調査したデータは日本にはなさそうなので比較はできないのが残念です。
マーケティングの世界では様々な調査が行われています。気になる調査結果がありましたらまた取り上げたいと思います。本当は今回、選択バイアスの話もしたかったのですが、量が増えすぎるのでまた次の機会に。
One more thing…
WIREDの記事の元になった報告書には、WIREDの記事には書かれていなかったツイッターのヘビーユーザーとライトユーザーの違いの細かい比較もありました。興味深かったので結果のみ紹介します。なんで記事に載せなかったんだ?
ちなみに私が知っているアメリカ人のツイ廃は去年、月当たり253ツイート(毎日約21ツイート!)かましてました。
Trump sent more than 7,700 missives on the social media service in 2019 — compared to 3,600 in the previous 12 months.
Donald Trump doubled his tweets in 2019
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